インタビュー

卒業後の就職活動は大苦戦、組織設計での非正規社員からのスタート

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大学を卒業してからの就職活動でした。卒業翌年の1月に、どうにかINA建築設計研究所に建築設計者として入社することができました。大型建物の設計を専門とする組織設計事務所です。

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組織設計事務所は大学院卒の採用が多く、本来ならば学部卒に道は開かれていませんでしたが、伝手をたどり、知り合いの知り合いの建築家や、大人が集まる飲み会に飛び込みでポートフォリオ(作品集)を持って行ったりして、ようやくつながった縁でした。第1回「せんだいデザインリーグ」で入賞していたこともプラスに働きました。

でも特例だったため、契約社員からのスタートでした。給料も正社員の6割で、非正規から社会人生活のスタートを切ることになりました。

組織設計事務所からスタートした設計者のキャリア

最初に配属されたのは公共建築の設計を担当する部署でした。公共建築の発注者は自治体です。民間の発注者であれば事業で利益を出さないといけないので、建物に対して明確に要望を持っているものなのですが、公共建築の発注者は前例を踏襲することが多く、建物自体に強い思いを持つ方は少ないのです。

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そのぶん設計者としては自分のやりたいデザインが通りやすいので、会社の中では公共建築を担当する部署は花形だったのですが、僕はお客さんのニーズを実現するというよりも、設計部の上司の意図を汲んで建築を作っているように感じました。これって納税している市民や建物を使う人のためになってないよなあ、と強く疑問に思っていました。

新卒は年に1回ぐらい異動することになっていたので、次は商業施設を主体とする設計部門に移り、ショッピングセンターや商業ビルを中心に担当することになりました。

商業建築、特にショッピングセンターの建設にはとても多くの人が関わります。事業主、管理会社、リーシングの会社、外構デザインをする会社、外観と共用部だけのデザインをする会社、個々の店舗の内装をデザインする会社、という具合です。事業主はとてもシビアで、時には10万㎡を超える建物を建設するにあたり、それぞれの職能の得意な部分をいいとこどりをするような発注をしていました。

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そんな中で僕の建築設計者としての職能は何かというと、建物全体を法規と構造・設備の面から成り立たせるための仕事。多くの関係者との調整がメインでした。設計と並行してテナントを誘致するリーシングが進められるのですが、テナントが決まり始めると、テナントから「もっと柱のスパンを広げてほしい」といった要望が出てくるので、そのつど設計の変更は当たり前。大型のショッピングセンターにもなると100を超えるテナントが入居することになるんですが、それぞれのテナントが別々に要望を出してくるため、変更に追われる毎日でした。

忙しい反面、ゲームみたいな感覚があって面白いと思いました。自分が必要とされている実感があったし、建築業界の外の多様な立場の人に会えました。建物はいろんな人の意志が作用しながらできているということ、お客さんが建物にはっきり費用対効果を求めてくるということがわかってきました。会社の中ではショッピングセンターの設計はつまらないと言われていてあまり人気がない仕事だったのですが、たくさんの人の欲望や要求が建物に入っていて、公共建築よりもずっと複雑で面白く感じました。

建築設計者は技術を修得するまでに時間がかかるので、若手はなかなかお客さんや協力会社から信頼されにくいのですが、みんなの要望を手際よく打ち返すことができれば若くても信頼を得られるということがわかったのも、いい経験になりました。設計技術が未熟でも、コミュニケーション能力でそこを補えばお客さんをはじめとするプロジェクトの関係者に貢献できるということです。

(取材・文 たかぎみ江)

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