インタビュー

組織設計事務所から発注者側への転職、コンストラクションマネジメントという仕事

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2008年に転職した会社は、ゼネコンのプロジェクトマネジメント部門から独立したコンストラクションマネジメントの会社でした。コンストラクションマネジメントというのは、クライアントの参謀のような立場で建設プロジェクトをマネジメントする仕事です。コンサルタントに近いですが、企画から設計・施工に至る建設プロセス全般にわたって技術的なアドバイスができる点が特徴です。社員10人の小さな会社でしたが、効率のよいビジネスモデルを築いていて、外資系企業の有名どころとも大きな仕事をしていました。

建築系で少数精鋭なのに、ビジネスのうまい会社

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社長はゼネコンの海外事業部に長くいて、東南アジアや香港で再開発などの仕事をしていた方で、ビジネスがめちゃくちゃうまい人でした。日本のゼネコンが海外で仕事をするときには、必要な作業員や資材を集めるために現地のコーディネーターと交渉し、ひたすら契約を交わしていくといった、マネジメントの業務に徹するんです。日本と違って契約条件も延々と詰めていかないといけない。なにかあれば裁判になる。そういうバックグラウンドを持った社長だから、発想がザ・ビジネスマン。きっちりしていて、なあなあなところがないんですよ。こういう人が建築の世界にいるんだなあと思って、すごく興味深かったです。

ゼネコン系の会社は、設計事務所とはまるで発想が違っていて、カルチャーショックを受けました。設計業は準委任といって、お客さんに言われた通りやるのが仕事という感覚があるんだけど、ゼネコンは一度金額を決めたらやり方は自由、みたいなところがあるんですね。だからいかに効率よくやるかを大事にします。

仕事は誰に外注すれば一番うまく安くやってくれるかを考えるところから始まります。たとえば60個レポートを書く業務であれば、何社かに割り振って、僕らマネジャーは進捗管理をしながら、同じクオリティで揃えるにはどうするかを考えるのが仕事。自分で手を動かすと怒られましたね。「お前の仕事は考えることであって、手を動かすために雇っているわけじゃない」と言われたのは衝撃的でした。設計者って、まず手を動かすんですよね。正論ではあるんですが、なじみのない考え方でした。

さらに、業務を定型化して、お客さんに提供する標準サービスを設けることで省力化していました。オリジナリティを出すよりも、アウトプットの標準化を追究していた。クライアントの中には物足りなさを感じる方もいたのですが、業務の組立は非常にしっかりしていました。マネジャーに対する姿勢も厳しかったです。裁量労働で残業代は給与に含まれる契約でしたが、定時を過ぎてオフィスにいると怒られました。

印象的だったのは、ある外資系企業がクライアントのプロジェクトです。そのクライアントは多くの建物を所有している会社を買収し、物件を整理して高く売却しようとしていました。不動産投資をするために建物を所有する会社を買収するなんて、建築とは発想が違うなと思いましたね。そういうスキームを組み立てるアセットマネジャーという方がクライアント側にいるんですよ。

僕たちのコンストラクションマネジメントの会社は、技術的顧問のような立場でそのプロジェクトに参画しました。数多くの物件を調査・診断してレポートを作成し、個々の建物の運用方針を決めます。解体して更地にして売るものもあれば、違法建築状態になっているところを直したり、きれいに改修して賃料とテナント入居率を上げたうえで売却したりするものもあります。

転職で出会ったコンストラクションマネジメント、究めたいと思うように

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複数の建物を同時に見ることになって思ったのは、もっとコンストラクションマネジメントというものを勉強しないといけないなということでした。法律で業務が決められている設計業とちがって、建築のマネジメントはまだまだ体系化していませんでした。世の中で一般的に行われているコンストラクションマネジメント会社が提供するサービスをちゃんと知って、自社の差別化要因を整理し、その上で自社のコンストラクションマネジメントサービスの標準化を図りたいと思ったんです。

それでコンストラクションマネジメントの勉強を始めました。クライアントにもコンストラクションマネジメントに関心のある方がいらっしゃったので、勉強会をして一緒にサービスを作りあげていくようなこともしました。おかげで当時の若い建設業の人間の中ではかなりコンストラクションマネジメントに詳しくなっていたと思います。小さい会社なので、自分で知識を習得していかないと、大手で働いている人に差をつけられてしまうという危機感もありました。

僕はその会社で唯一、認定コンストラクション・マネジャー資格をとって、日本コンストラクション・マネジメント協会(日本CM協会)に出入りしてました。米国PMI認定のPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)も取得しました。コンストラクションマネジメントの勉強をしていくと、プロジェクトマネジメントの考え方が基礎にあることがわかります。プロジェクトマネジメントと言っても、建設に限らずすべてのプロジェクトに関するマネジメントのことです。PMPは現在のPMを体系的に学ぶことができる国際資格で、実務経験や事前のトレーニングが必要です。今ではIT技術者が取得していたりして、IT関連の公共事業の発注では保有を問われたりすることもあるようです。

この会社で学んだこととして、いろんな発注を経験したことも挙げられます。コンストラクションマネジメントには定常業務があるわけではないので、自分の業務のフィーを自分で決めるのです。業務を組み立てて提案し、自分で契約書や見積書も作らなくてはいけません。小さい会社だったので、効率の悪い仕事を取ってくると怒られますが、利益が出るなら額の大小は問われませんでした。

おかげで自分のサービスの値段を自分で決め、予算の中で業務を組み立てる感覚を身につけることができました。当時はわからないことばかりでしたが、その後のキャリアで大きく役に立ちましたし、もちろんフリーランチにも活かすことができています。

(取材・文 たかぎみ江)

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