有給休暇(年次有給休暇)とは、労働基準法によって認められた、賃金が支払われる休暇のことです。
入社6ヶ月時に一定の要件を満たした労働者に生ずる権利であり、以降勤続年数に応じた日数が付与されます。労働者にとっては心身のリフレッシュ、設計事務所にとっては生産性の向上など、双方そのメリットを活かすことができる制度です。
この記事では有給休暇のしくみや、設計事務所で運用するときのポイント・注意点について設計事務所の代表向けにまとめています。
このような状況・会社におすすめです
- 設計事務所における有給休暇の日数や運用方法を知りたい
- スタッフから休みを取りたいといわれたので、有給の管理方法を知りたい
- 独立前に働いていた設計事務所に有給の制度がなく、正しいルールがわからない
- 有給休暇のルールが変わったと聞いたので、変更後のルールを知りたい
有給休暇運用の概要
有給休暇運用についての概要は以下の通りです。
期待される効果 | 業務効率の改善、生産性の向上 |
頻度 | 労働者からの申し出による |
スケジュール | 雇用開始日から6ヶ月で10日間付与し、以降1年ごとに付与 |
費用 | なし |
手続き主体者 | 設計事務所の代表、人事担当者 |
2019年4月の労働基準法の改正により、年10日以上有給休暇が付与される労働者に対しては、年5日以上の確実な取得が雇用主に義務付けられました。
設計事務所で有給休暇を運用するときのポイント
設計事務所で有給休暇を運用する時に確認しておきたいポイントについて紹介しています。
有給休暇の付与は、労働基準法で規定されたルールが存在する
有給休暇は労働基準法の第39条で労働者に認められた権利です。就業規則等に規定がなくても、労働者は取得することができます。
「うちは有給休暇はないよ」という設計事務所もまだまだあるようですが、コンプライアンスの観点から考えを改める必要があります。
社員を雇うと、入社半年後に10日の有給休暇が自動的に付与される
有給休暇は一般的なフルタイムの働き手の場合で、6ヶ月の継続勤務と全労働日の8割以上の出勤により、雇用6ヶ月時に10日が付与されます。その後1年毎に付与日数は増え、最大で20日まで付与されることになります。
フルタイムの労働者の付与日数
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
パートタイムの労働者でも勤続年数によって付与日数は増えていきます。詳しい付与日数などは厚生労働省のお知らせ年次有給休暇の付与日数は法律で決まっていますでご確認いただけます。
有給休暇の安定的な運用のために、申請ルールを決める
労働基準法には具体的にどのように有給休暇を運用するか、細かいルールは定められていません。
原則として有給取得に理由は必要なく労働者の申出によって消化されますが、規模の大きくない設計事務所などで運用する場合、業務に支障がでてしまう可能性もあります。
勤怠管理システムを導入していない設計事務所は、事前の届け出など申請ルールを定め管理していくことで会社運営を安定化できます。
計画的に有給休暇を設定した方が、業務への影響も少なくメリットもある
2019年4月の改正により、年に5日は会社や雇用主が時季を指定して消化させることが義務化されました。
有給休暇の取得により労働者はリフレッシュすることができ、そのため生産性の向上にも効果が期待できます。
会社として安定した業務運営を行っていくためにも、計画的に有給休暇を運用することで 業務への影響も抑えられ、事務所と働き手の双方にとってメリットがあります。
労働法の有給休暇は最低限のものなので、スタッフに配慮した運用ルールも可能
労働基準法に定められている有給休暇の付与日数は最低限守るべきラインなので、規定より多くの日数を付与することも可能です。
安定した会社運営を目指し、よりスタッフに配慮した運用ルールを設定することもできます。規定以上の有給休暇や特徴的な休暇制度を設けることにより、採用時のアピールポイントとなり優秀な働き手の確保にも繋げられます。
設計事務所で有給休暇を運用するときの注意点
有給休暇の運用に関して、注意するべきポイントをまとめています。
2019年の労働基準法の改正により、年5回の有給休暇取得義務化
これまで有給休暇の取得は労働者に任されていましたが、2019年4月の改正により年5日の有給休暇取得が義務化されました。
これに違反すると雇用者に対して罰則が発生し、懲役6ヶ月または罰金30万円以下の刑事罰が課される可能性があります。
学生を含むアルバイトスタッフにも有給休暇は適用される
有給休暇は正社員、パートタイム労働者などの区分に関係なく、一定の条件を満たした全労働者に対して付与する必要があります。アルバイトであっても、6ヶ月以上かつ所定労働日の8割以上の勤務で有給休暇が付与されます。
ただし週の所定労働日数が少ない労働者の場合は、その日数に比例して有給休暇日数が定められます。
有給休暇の時効は2年なので、計画的な運用が求められる
発生した有給休暇の有効期間は2年です。毎年付与される有給休暇ですが、2年を経過すると時効により消滅しますので、計画的な管理・運用が必要となります。
年次有給休暇管理簿の作成と3年間の保存の義務もある
2019年4月の労働基準法改正にともない、労働者ごとに有給休暇の消化時季、日数、基準日を明らかにした書類を作成し、当該期間の満了後3年間は保存をしておく必要があります。
管理簿はいつでも出力できる仕組みとしたうえで、システム上で管理することも可能です。
有給休暇運用に関する書籍・関連情報
- 厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
有給休暇に関する基本的な情報が全てまとまっています。2019年4月の労働基準法改正も踏まえた内容で最新の情報が確認できます。
- 年次有給休暇とは|5分でわかる基本概要まとめ|労働問題弁護士ナビ
弁護士が監修する労働法などに関するサイトです。有給休暇の各ポイントや背景など、実践的な情報がまとめられているページです。
設計事務所で有給休暇を有効に運用するには
有給休暇は労働者の心身のコンディションを良好に保ち、生産性を向上させ、安定的な会社運営のために重要な制度です。法律上一定の要件を満たすすべての労働者に発生する権利となるため、確実な運用が求められます。
設計事務所における有給休暇運用に関するポイントは以下の通りです。
- 有給休暇は労働基準法により認められている労働者の権利
- 一定要件を満たす働き手に、雇用開始6ヶ月時で10日付与され、以降1年毎に雇用年数に応じて付与される
- 2019年の労働基準法改正により年5日の有給消化が雇用主に義務化
- パートタイム、アルバイトにも労働日数に応じて付与される
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