この記事では設計事務所が正社員を1人雇用すると、1年でどれだけの費用がかかるかを分かりやすくまとめています。
設計事務所が正社員を1人雇用するには、給与以外にも社会保険料などさまざまな費用が発生します。
正社員の雇用にかかる費用の把握は計画的な採用活動につながります。この記事では給与のほか社会保険料や労働保険料、PCやCADソフトなどの支給費用など設計事務所の正社員の雇用に係る費用を計算しています。
(この記事で紹介するサービスや製品の内容と価格は2018年4月16日現在のものとなっています。また、サービスや製品の価格は税抜きです。)
働き手を雇用すると給与以外にもさまざまな費用がかかります
設計事務所で正社員を1人雇用するには給与や交通費などの手当の他に、社会保険料・労働保険料などがかかります。
また、パソコンの支給費用や、CAD・Illustrator・Photoshopなどの設計事務所の業務で使うソフトの使用料金なども必要になります。
さらに社内のデータ共有などにGoogleのグループウェアであるG Suiteなどを使っている場合は利用料金が発生します。
次の項目からはそれぞれの具体的な金額を計算しまとめています。
社会保険料や労働保険料は給料や手当の金額に応じて支払います
設計事務所で正社員を雇用すると、給与の他に社会保険料や労働保険料を支払う必要があります。
社会保険料は標準報酬月額によって決まります
社会保険は健康保険・厚生年金保険・介護保険で構成されており、正社員であれば必ず加入します。
社会保険の内容 | 健康保険 | 厚生年金保険 | 介護保険 |
各保険の内容 | 業務以外のけがや病気、出産、死亡などに備える保険 | 障害を持った時、死亡した時に本人や遺族に一時金を受給する保険 | 介護が必要になったときに介護サービスを受ける保険 |
正社員は加入対象かどうか | ・正社員は必ず加入 | ・正社員は必ず加入 | ・正社員は必ず加入 ・40歳以上の方が加入 |
健康保険と厚生年金保険は標準報酬月額に保険料率をかけて計算します。標準報酬月額とは、給与や通勤手当などの毎月支払われる報酬と年3回まで支払われる賞与の額によって算定される、社会保険料の計算の基準となる金額です。
社会保険料は働き手と会社が半額ずつ負担します。また、協会けんぽの場合、健康保険料率は都道府県ごとに変わります。
例えば東京都で40歳未満の正社員を雇用する場合、会社が負担する社会保険料は以下のようになります。
H30年3月分からの東京都の社会保険料(2018.4.16現在)
給与(手当等も含む) | 月20万円 | 月25万円 | 月30万円 |
健康保険料の会社負担 | 月9,900円 年118,800円 | 月12,870円 年154,440円 | 月14,850円 年178,200円 |
厚生年金保険の会社負担 | 月18,300円 年219,600円 | 月23,790円 年285,480円 | 月27,450円 年329,400円 |
合計 | 月28,200円 年338,400円 | 月36,660円 年439,920円 | 月42,300円 年507,600円 |
※賞与はないものとして計算しています
雇用保険料は働き手と分担し労災保険は全額会社が負担します
労働保険は雇用保険と労災保険で構成されています。雇用保険は労働時間によって加入対象かどうかが決まります。労災保険はアルバイトなども含む全ての従業員が加入対象となります。
労働保険の内容 | 雇用保険 | 労災保険 |
各保険の内容 | 従業員が失業した際の失業手当の支給、教育訓練給付、育児・介護休業給付などをおこなう保険 | 従業員の業務上の病気やケガに備える保険 |
加入対象者 | ・1週間の所定労働時間が20時間以上かつ、31日以上引き続き雇用される見込みの従業員 | ・労働時間にかかわらず、全ての従業員が対象 |
雇用保険料と労災保険料は賃金にそれぞれの保険料率をかけて計算します。ここでいう賃金とは税金や社会保険料などを控除する前の給与や月々の手当や賞与などの総額です。また、祝い金や出張旅費などの一時的に支給されるものは賃金から除きます。
雇用保険料は事業主と従業員とで分けて負担し、毎月従業員の給与から控除されます。それに対し労災保険は全額会社負担となります。また、労災保険料の計算は年度ごとに全従業員の賃金に保険料率を掛けて計算します。
会社が負担する労働保険料は以下のようになります。
労働保険料の会社負担(2018.4.16現在)
給与(手当等も含む) | 月20万円 | 月25万円 | 月30万円 |
雇用保険料の会社負担 | 月1,200円 年14,400円 | 月1,500円 年18,000円 | 月1,800円 年21,600円 |
労災保険料 | 月600円 年7,200円 | 月750円 年9,000円 | 月900円 年10,800円 |
合計 | 月1,800円 年21,600円 | 月2,250円 年27,000円 | 月2,700円 年32,400円 |
※賞与はないものとして計算しています。
設計事務所の業務に使えるノートパソコンは14~15万円程度
設計事務所や工務店での業務に必要なパソコンの支給にも費用がかかります。以下のようなスペックの12~13インチくらいのサイズのノートパソコンは14~15万円程度で購入できます。
製品名 | HP envy13 | Lenovo ThinkPad X270 |
サイズ | 13.3インチ | 12.5インチ |
スペック | ・CORE i5 ・512GB SSD ・メモリ8GB | ・CORE i5 ・256GB SSD ・メモリ8GB |
保証など | 出張修理(3年間) | 翌日出張修理、破損や盗難などの補償(3年間) |
価格 | 141,100円 | 148,660円 |
こういった構成から、スペックや補償を調整することで金額は多少増減します。また、周辺機器としてモニターが必要な場合は、以下のような価格のものがあります。
製品名 | ProLite XB2481HSU |
サイズ | 23.8型 |
スペック | ・LED/AMVA方式パネル ・HDMI端子、DVI-D端子、D-Subミニ15ピンの3系統入力 |
保証など | 3年間保証 |
価格 | 29,445円 |
AutoCADの使用にかかる費用は年18.5万円
設計事務所でよく使われる建築系のCADとして、AutoCADとVectorworksが有名です。大きい会社と仕事をするのであれば、どちらかのソフトは必要になってきます。
AutoCADの1年間の利用料金は以下のようになっています。
AutoCADのサブスクリプション(1年間) | 185,000円 |
一方Vectorworksは買い切りのソフトです。契約更新が不要ですがその分ソフトが高額になっています。
Vectorworks Architect 2018(買い切り) | 416,000円 |
また、工務店などでよく使われている無料ソフトのJw_cadというソフト使う選択肢もあります。
Illustrator・Photoshop・オフィス系ソフトの利用料金は年間8.2万円程度
設計事務所ではIllustratorやPhotoshopといった、Adobeのソフトウェアもよく使われます。また、WordやExcelなどのオフィス系ソフトウェアも必要になります。
これらのソフトをサブスクリプションで1年間利用した場合8~10万円程度かかります。
Photoshop(単体プラン) | 月2,980円(年35,760円) |
Illustrator(単体プラン) | 月2,980円(年35,760円) |
Office 365 Business | 月900円(年10,800円) |
合計 | 月6860円(年82,320円) |
また、オフィスには買い切りの製品もあります。家電量販店など販売されているほか、PCの購入の際に注文できる場合もあります。
買い切りのソフトはアップデートができないなどデメリットがありますが、3年程度使うのであればサブスクリプションよりお得になる場合があります。
Googleのグループウェアやグループチャットの使用にかかる費用は年間1.4万円程度
また、社内のデータのやり取りなどにGoogleのグループウェアであるG Suiteなどを使う場合も利用料金がかかります。
G Suiteはメンバーに共有したスプレッドシートを共同で編集する、Google ドライブでスムーズにデータを共有する、といったように社内データの共有と管理になどに役立ちます。
G Suite(Businessプラン) | 月1,200円(年14,400円) |
G Suiteは月600円のプランもあります。プランは変更可能なので、安いプランで試してから導入を検討してもいいでしょう。
また、グループチャットツールのSlackも社内のコミュニケーションに役立つツールです。メールよりもスピーディーかつシンプルにやり取りできるため、連絡がスムーズになります。
また、Slackは無料でもある程度の機能が使えます。有料プランでは検索できるログの件数や、ファイルのアップロードに使えるストレージの量などが多くなります。しかし小規模な設計事務所での連絡用としては、無料プランでも十分対応できます。
設計事務所の雇用にかかる費用を把握し計画的な採用活動を
これまで解説した、正社員を1年間雇用するのにかかる費用をまとめると以下の表のようになります。
雇用に係る費用 | 月給20万 | 月給25万円 | 月給30万円 |
1年間の給与 | 2,400,000円 | 3,000,000円 | 3,600,000円 |
社会保険料(年額) | 338,400円 | 439,920円 | 507,600円 |
労働保険料(年額) | 21,600円 | 27,000円 | 32,400円 |
パソコン支給費 | 141,100円 | 141,100円 | 141,100円 |
AutoCAD(1年間) | 185,000円 | 185,000円 | 185,000円 |
Illustrator、Photoshop、オフィス(各1年間) | 82,320円 | 82,320円 | 82,320円 |
G Suite(1年間) | 6,000円 | 6,000円 | 6,000円 |
合計(1年間) | 3,174,420円 | 3,881,340円 | 4,554,420円 |
このように、設計事務所の正社員の雇用にはさまざまな給与以外のコストかかります。正社員の雇用にかかる費用を把握し計画的な採用活動を行うことで、設計事務所と働き手の両方にメリットが生まれます。
また、有期契約や短時間労働の方などいわゆる正社員以外の方を設計事務所で雇用する場合、キャリアアップ助成金の活用を検討してみてください。
キャリアアップ助成金は非正規雇用のスタッフの処遇改善や正社員化に対して補助金を受け取れる仕組みです。
フリーランチはキャリアアップ助成金を活用した採用活動についてご相談をお受けしております。ぜひご活用ください。