インタビュー

不動産証券化の舞台から降り、アラビア圏で海外キャリアへの道を模索

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キャリアの転換となったきっかけは、2008年9月に起こったリーマンショックでした。僕のクライアントはみんな外資ばかりだったので、周りよりも危機感はあったと思いますが、最初はみんな「なんかヤバいな」と思っていても、何が起きているかは実感できていなかったと思います。

不動産証券化バブル終焉、リーマンショックがすべてを変えた

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仕事はだんだん減っていきました。建設プロジェクトは完成までの期間が長いので、すぐに仕事がなくなったわけではありませんが、新規の話はまったく生まれませんでした。契約を切られるのではなく、クライアントの事業部がなくなったり、クライアントが転職したりといった具合で、仕事よりもクライアントが先にいなくなってしまうという経験をしました。

僕もクライアントから好いてもらって、いい発注をいただいていたのですが、お世話になったクライアントの立場が自分のことより心配になるくらいで、新たに営業できる雰囲気ではありませんでした。

勤め先のCM(コンストラクション・マネジメント)会社は、いよいよCMの仕事がなくなってくると、設計や監理の仕事に手を広げ始めました。会社を潰さないためには当然のことではあるし、自分が経営者の立場だったら同じ決断をしたかもしれません。でも本当はCMは、自らが設計をすることでお金をもらってはいけないんですよね。これまで設計者や施工者からの中立性を謳ってきたのに、景気が悪くなったから立場を替えるというのは、自分の仕事を否定することになってしまいます。

それと、マネジメントという仕事自体は好きでしたが、この会社の看板で提供しうるサービスの限界も感じていました。クライアントと自分との関係が強固になっていく中で、クライアントと一線を引いてつき合う会社の姿勢を責められることもありました。クライアントと追究してきた、あるいは独自に学んできたCMという仕事をもう少し深めていきたい。どこかで真のCMの姿を追究したいという想いがあったのだと思います。

市場は混乱していましたが、転職市場も同様でした。転職エージェントを訪ねても求人はほとんどありません。そもそもCMという仕事自体が急に世の中に出現したので、転職先の選択肢もないことに気がつきました。今とは状況が全く違いますよね。

CM会社の退職を決断、アラビア圏で海外キャリアを模索

悩んだ結果、2010年にCM会社を退職して、大学院に復学することにしました。リーマンショックがなければしなかったと思います。大学院の研究室は建築史系だったので、中東でファイナンス手法を用いた文化財保存の研究をするというキャリアを作れれば、社会人になってから大学に戻った意味も生まれるし、終了後も外資系企業などに働き口があると考えたんです。数年単位の時間がかかりそうではありましたが、景気が回復したらマネジメントの世界に戻ってくるつもりでした。

なぜ中東かというと、ぼんやりと国際キャリアのことも考えていたんです。ドバイなど中東でのプロジェクトがフォーカスされていた時期でしたので、海外も見据えて長期的に仕事の可能性を広げるようなチャレンジをしたいとも感じていました。それには英語以外の国連公用語を学んでおく必要があると思ったんです。一番マイナーなアラビア語なら競争者がいないだろう、なんて算段もあったんですけど。

それで一級建築士に合格した後、アラビア語の勉強を始めました。週末を利用して、仙川にあるアジアアフリカ語学院という専門学校に通っていました。

研究対象は、アラビア語圏の中ではシリアにしようと思いました。シリアには留学生も多く、当時は治安も悪くありませんでした。あとアラビア語は方言による違いが激しいのですが、シリア方言は比較的フスハー(共通語)に近いんです。

ダマスカスの街角。

ダマスカスの街角。

ステイ先の部屋。

ステイ先の部屋。

退職してすぐ、2か月弱、研究の準備のためにシリアに渡航しました。留学生の下宿のような部屋を借りて、午前中は現地で雇ったアラビア語の家庭教師のところに行って勉強し、午後は現地のコネクションづくりや資料収集に動き回るという生活です。

建築分野ではシリアに詳しい人にアテがなかったので、日本でアラビア語の先生に紹介してもらった現地の人やJICAの人を訪ねて、長期ビザを発行してくれる受け入れ機関はどこかとか、どこの語学学校で勉強できるとか、いろいろ教えてもらいました。それなりの手応えを掴んで、2010年4月から大学院に復学しました。

(取材・文 たかぎみ江)

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