労働条件通知書とは、雇用主(設計事務所など)が被雇用者(スタッフ、従業員)に対し、労働条件について明示する書類です。労働条件(就業規則)は、原則では書面で交付することにより、被雇用者に明示することが義務づけられています。
労働条件の明示は、社員だけではなくアルバイトやパートなどすべての労働者を対象として必要になります。設計事務所でアルバイトを雇う場合など、安全に会社を運用していくためにどういった手続きが必要かを知ることが大切です。
この記事では、労働条件通知書に盛り込む内容など、作成するときのポイントや注意点についてまとめています。
このような状況・会社におすすめです
- 設計事務所の採用時に必要な、基本的な手続きを知りたい
- 設計事務所でスタッフを採用するが、待遇や労働条件をどのように伝えればよいのか知りたい
- 労働条件を通知するときにどのような内容が必要か知りたい
- 雇用契約書と労働条件通知書の違いがわからない
労働条件通知書の概要
労働条件通知書についての概要は以下の通りです。
期待される効果 | 業務効率アップ、手続き負荷軽減 |
頻度 | スタッフ採用時(アルバイト含む) |
スケジュール | 都度、採用時 |
費用 | 無料 |
手続き主体者 | 設計事務所の代表、事務担当者 |
労働条件通知書は退職日から起算して3年間の保管が労働基準法で義務づけられています。労働条件確認後、雇用主と被雇用者相互に持っておくのが望ましいです。
設計事務所における労働条件通知書作成のポイント
設計事務所で労働条件通知書を作成する前に、確認しておきたいポイントについて紹介しています。
労働条件の明示は、雇用主の義務です
雇用主が被雇用者に対して労働条件を明示することは、労働基準法によって定められています。労働条件の通知は、雇用形態に関わらず全ての労働者が対象となるため、アルバイトを含め設計事務所がスタッフを採用する際には必ず行う必要があります。
労働契約をする際に明示すべき絶対的明示事項を確認する
労働条件通知書には、明示すべき絶対的明示事項があり、それらの項目について、自社で取り決めている労働条件を明示する必要があります。
絶対的明示事項には、以下の項目があります。
- 労働の契約期間
- 就業場所
- 業務内容
- 始業/終業時刻、休憩時間、所定時間外労働の有無
- 休日
- 休暇
- 基本賃金/賃金締切日・支払日
- 退職
このほかにも、必要に応じて社会保険、雇用保険、(アルバイト・パートタイムのみ)相談窓口についても記載します。
小規模な設計事務所ではスタッフ採用時に労働条件が明確でないケースも見られます。絶対的明示事項の項目を知り、事業所に合った適切な条件を決めておきましょう。
労働条件通知書は、厚生労働省(東京労働局)のHPでテンプレートが公開されています。様式集・労働基準法関係の様式集(Word、PDF)よりダウンロードして使用することができます。
雇用契約書で労働条件の明示をするのが一般的
絶対的明示事項がすべて記載されていれば、作成するのは労働条件通知書、雇用契約書のどちらかで大丈夫ですが、雇用契約書で労働条件の通知をするのが一般的です。
労働条件通知書が雇用主から被雇用者に一方的に通知する書類であるのに対し、雇用契約書は雇用主と被雇用者の両方が労働条件について確認し、同意したうえでの契約書です。
雇用契約書は雇用者(設計事務所)と被雇用者(スタッフ)の両方が記入・捺印を行うため、労働条件についてトラブルが起こりにくくなります。雇用契約書で労働条件の通知を兼ねることで、労働条件への相互認識がより深まります。
働き方の認識相違やトラブル防止として、雇用契約書で労働条件を明示する方法がおすすめです。
労働条件通知書 | 雇用契約書または労働契約書 |
設計事務所が採用されたスタッフに対し、一方的に通知する書面 | 設計事務所と採用されたスタッフ、双方の合意のもと確認を交わす書面 |
一般的に署名は設計事務所のみ | 署名は設計事務所、スタッフの両方 捺印も行う |
労働条件の明示にFAX・メール・SNS等が活用できる
労働条件の明示は、これまで書面の交付に限られていましたが、労働法の改正により、2019年4月から労働者が希望する場合FAX・メール・SNS等での明示が可能になりました。
ただし、出力して書面を作成できるものに限られるため、メールやLINEなどのSNSツールで送付する場合はPDFなどで添付する方法が望まれます。
詳しくは厚生労働省のお知らせ平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになりますのページでご確認いただけます。
設計事務所における労働条件通知書作成の注意点
設計事務所で労働条件通知書を作成する前に、注意するべきポイントをまとめています。
労働条件を明示せずに従業員を使用すると、罰金が科せられる可能性がある
労働条件の明示は、雇用主(設計事務所など)が被雇用者(スタッフ、従業員)に対して行うものであり、労働基準法第15条で定められています。
労働条件を明示することなく被雇用者を働かせた場合、雇用主は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
正社員だけでなく、アルバイトやパートを雇い入れる場合にも、労働条件の明示が必要です。厚生労働省東京労働局のサイトにて書式が無料でダウンロードできますので、労働条件について取り決めをおこない、必ずスタッフに明示しましょう。
労働条件の不利益変更は原則できないため注意が必要
労働条件は、被雇用者の同意なく不利益変更(給料が下がる、休日が減る等、働く人にとって不利になる労働条件の変更)できないことが労働契約法9条により定められています。
労働条件通知書や雇用契約書で労働条件(就業規則)を明示し合意を得たあとに、雇用主の勝手な判断で労働者に不利益な形で条件を変更することはできません。ただ、たとえ不利益変更であっても、合理的理由や労働者との合意の上であれば問題はありません。
不利益変更について詳しく知りたい場合は、厚生労働省による労働契約法のポイントページでご確認いただけます。
労働条件通知書に関する関連情報
- 東京労働局|様式集
労働条件通知書やその他労働基準法に関わる書類の雛形がダウンロードできます。さまざまな労働者の雇用形態・業態ごとのテンプレートも用意されています。
- フリーランチ|設計事務所が求人を作成するときに決めておくべき5つのポイント
採用経験が少ない設計事務所向けに、労働条件通知書の作成ポイントについて解説しているページです。
雇用トラブルを防ぐために労働条件の明示は必ず行いましょう
労働条件の明示は、正社員、契約社員、パート、アルバイト、派遣などの雇用形態に関わらず、雇用形態を結ぶすべての会社で必要です。
雇用や働き方のトラブルを避けるためにも、スタッフを雇用する際には必ず作成しましょう。厚生労働省東京労働局のフォーマットを活用し、自社用にアレンジしたものを作成しておけば、書類作成の時間を削減できます。
設計事務所における労働条件の明示、労働条件通知書の作成に関するポイントは以下の通りです。
- 雇用形態に関わらず、スタッフを採用する際には労働条件の明示が必須
- 従業員に労働条件が明示されていなかった場合、労働基準法により設計事務所は30万円以下の罰金に処せられる可能性がある
- 雇用主と被雇用者が相互に合意する雇用契約書で労働条件の明示も兼ねることで、認識の相違によるトラブル防止にもつながる
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